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2019年12月22日

割れ鍋に綴じ蓋 ―ワレナベニトジブタ― 第12回 過去を知らされない自分

朝、旅立ち.bmp正直に言ってしまえば、私はこれまで父という人間が理解出来ずにいた。いや、むしろ、心のどこかで軽蔑とまでは言わないまでも、常に、一種不甲斐なさを感じていたかもしれない。静岡の片田舎で生まれ、運命に抗うことや挑むことも無く、生まれ育った土地にしがみつく様にして年を重ねていく。まるで面白くもなんとも無い、ただただ平坦な道を、常に楽に歩んできたように、私には見えていたのだ。しかし、それは私の大きな間違いだったということが、たった今、私には分かった。(本文より)



割れ鍋に綴じ蓋  ―ワレナベニトジブタ― 
第12回 過去を知らされない自分


 正直に言ってしまえば、私はこれまで父という人間が理解出来ずにいた。いや、むしろ、心のどこかで軽蔑とまでは言わないまでも、常に、一種不甲斐なさを感じていたかもしれない。
 静岡の片田舎で生まれ、運命に抗うことや挑むことも無く、生まれ育った土地にしがみつく様にして年を重ねていく。
 まるで面白くもなんとも無い、ただただ平坦な道を、常に楽に歩んできたように、私には見えていたのだ。
 しかし、それは私の大きな間違いだったということが、たった今、私には分かった。
 父の人生にも大きなうねりがあり、父はそれを乗り越えてきたのだ。そして、封印してきた過去と再び向き合うことにより、父は真実を受け入れ、また新たなうねりを乗り越えた。誰に助けを求めることも無く、自らの力で。
 では、私はどうだと言うのだろう?自ら封印した過去を知った私は。いや、違う、私は知ったのではない、知らされたのだ。しかも、興味本位にお金を払って。
 そうなのだ、父においては、封印された過去を知るに至るまでには、私の狂言家出という必然があり、その必然が真実を結びつけた。
 しかしである。私はさっきも言った通り、興味本位から偶然にこれを知り得た。つまり、父が自ら血を流し、痛みを感じながらも乗り越え掴んだものを、私は、何の努力もせず、何の葛藤も無いままに、まるでスーパーで買い物でもするかのように、博士にいくばくかの費用を支払い、安易に買い受けたのである。
 私は、急に不安を覚えた。
「は、博士、父は、自分の力で封印した過去を探し出しました。そして、それを受け入れ、誰に話すこともなく、それ以降も普通の生活を紡いでいきました。ある意味それは、凄いことだと思うんです。
 し、しかし、その点、私は・・・、自分の興味本位から博士に費用を払い、何の苦労もなしに、まさに他力本願でつまらない依頼をし、そして、実体験ではなしに、他人である博士から、こんなにも重要な事実を説明してもらっているのです。
 つまり、父は能動的に、自分の意思で真実を掴み取りましたが、私はと言うと、その・・・、受動的なまま、ただ他人任せにしていただけです。これでは、私は、あの頃から何ひとつ進歩もないのでは、ありませんか。私は今の今まで、ずっと逃げ続けて来たのですから。
 それだからこそ、私は、とても大きな不安を感じてしまうのです。
 私が今日、この場所で、博士から真実を知らされるということは、本来の私が気づくべき時点より明らかに先んじているのではないでしょうか。
 いえ、本来なら気づかずに終わるかもしれないことを、無理矢理知らされているかもしれないのです。
 つまり、今、私がここにいることによって、今後の歴史が、大きく変わってしまうのでは・・・」
 私の語尾は、恐ろしさからか明確に発音できずに、とんだ尻切れトンボになってしまっていた。
 博士は、先ほどと同じようにうんうんと2度ほど無言で頷いてから再びキーボードの方に移動して、話し始めた。
「実はですね、そう考えられるのは、鈴木さん、あなただけではありません。ここに来られた全ての方が、あなたと同じように、自分の本当の過去を他人の私から聞かされるのです。しかも、本来なら触れられたくない衝撃的な過去をです。
 そして、衝撃的ゆえに、その行為自体が、自分の運命を本来とは違った方向に向かわせはしないかと、そんな風に不安になるのも、当然と言えば当然です。
 正直に申し上げますと、当初は、私自身も不安でした。私の行為によって、タイムパラドックスを引き起こすんじゃないかと、そんな風に考えてしまったんです。
 そこで、私は一計を講じてみました。今までのパラレルワールドのシミュレーションと同様、『ここで自分の過去を知らなかった場合』の世界を探し出して見てみたのです」
「えっ? そ、それは、どういう意味ですか?」
 私には、博士の言っている意味がすぐには呑み込めなかった。あれこれ繋ぎ合わせようと考えている私に博士はモニターを顎で指しながらキーボードを軽やかに叩いた。
「つまりは、こういうことです」
カタタタタ・・・
 モニターの画面が切り替わる。
「な、なんと・・・」
 そこは1週間前のこのビルの入口。
 エレベーターに乗るべきか乗るまいかと悩みに悩んで、行っては戻りを繰り返す私がいたのだ。
「ここにいる鈴木さんは、随分と悩んだ末に、結局はエレベーターに乗ることなく、つまり、私に会わずに、このビルの前から去って行きます。これは、出現率0.1%以下の極めて稀少なパターンですが、全ての方の精神的なアフターフォローの為に、毎回タカハシくんが、苦労して探し出してくれています」
「アフターフォロー。な、なるほど!ここにいる本当の過去を知らない私のその後を追って、過去を知らされた私と比較対照すれば・・・」
「さすがですね、その通りです」
 私たちが見つめる中、画面の中のもう1人の私は、散々迷った後、看板を見つめ大きく深呼吸をすると踵を返して平和通りを早足に駅に向かってしまった。
「さあ、これからです。私に過去を告げられないままのもう1人のあなたが、これからいったいどんな人生を歩むのでしょうか。そしてそれは、ここにいるあなたと、どれだけ違っているのか?」
 私は、ごくりと唾を飲み込むと、博士を見つめた。恐らく、その表情があまりに不安げだったのだろう、私の肩に手を置いた博士は、またやさしく語り始めた。
「先程も申し上げましたが、当初このアフターフォローは、助手のタカハシくんの考案によるサービスとして始められました。
 しかし、そのサービスで得た結果こそが、この一連の実験における真理を指し示す実に大きな鍵と言うべき結果なったのは、私にとっても本当に意外でした」
「と、言いますと?」
博士は、ニコッと笑った。
「鍵は未来にあります」
「み、未来が・・・、未来が、見られるんですか?」
 私はあまりの驚きに、椅子から腰を浮かべて叫んでしまった。
 でも、よくよく考えてみれば時間・・・、過去、現在、未来が繋がっている一本の線のようなものなら、過去をあれだけ細やかに見ることができる博士に、未来が見えたとしたところで、何の不思議もないのかもしれない。
「私自身も未来を先回りして覗き見ることは、物理学者としての倫理に反すると思っておりました。
 しかし、私たちが見ようとしているのは、あなたとは違う選択をしたもう1人のあなたたちの世界の未来なわけですし、この実験結果を見たならば恐らく・・、ふふふ、神様も私を許してくれることでしょう」
 博士は科学が行き着くところは神であるとでも言うかのように、天を指差すと、また軽やかにキーボードを叩いた。と同時に、モニター画面が16分割に切り替わって各画面の右下に14桁の数字が映し出された。
「ちょっと小さくなってしまいましたが、この14桁の数字は、左から4つが西暦、以降月、日、時、分、秒の順に並んでいます。
 そして、16に分かれた中の左上の画面、あれが先程のただ1人だけ違う選択をしたあなたの画面です。他の15は、全く無作為に抽出したもう15人のあなたたちです」
「あ、ああ、なるほど。これを同時進行させて・・・」
 私の質問に博士はニコニコしながら応えた。
「ご名答です。そして、これが過去から現在、そして未来へと紡がれた、あなたの不思議な旅の終わりでもあります」

第13回「16人の私」へつづく




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posted by maruzoh at 22:45| Comment(0) | ◆割れ鍋に綴じ蓋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジャー・ウォブルさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪