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2019年10月20日

割れ鍋に綴じ蓋 ―ワレナベニトジブタ― 第3回  パラレルワールド=金太郎飴

朝、旅立ち.bmp「パ、パラ・・・、パラ、なにワールドですって?」私は、博士の口から発せられた聞き慣れない言葉を反芻していた。「パラレルワールドです、パ・ラ・レ・ル。パラソルワールドでも、アパレルワールドでもありません」そういうと博士は、口を押さえて「くっくっ」と思い出し笑いをした。きっと、以前に訪れた客が、そんなことを言ったんだろう。しかし、私だって馬鹿にはできない。私の頭の中には無数のカラフルな傘が、描かれていたのだから。質問の糸口さえ見出せないで押し黙っている私に、博士が頷きながら近寄った。(本文より)



割れ鍋に綴じ蓋 ―ワレナベニトジブタ― 
第3回 パラレルワールド=金太郎飴


「パ、パラ・・・、パラ、なにワールドですって?」
 私は、博士の口から発せられた聞き慣れない言葉を反芻していた。
「パラレルワールドです、パ・ラ・レ・ル。パラソルワールドでも、アパレルワールドでもありません」
 そういうと博士は、口を押さえて「くっくっ」と思い出し笑いをした。きっと、以前に訪れた客が、そんなことを言ったんだろう。
 しかし、私だって馬鹿にはできない。私の頭の中には無数のカラフルな傘が、描かれていたのだから。質問の糸口さえ見出せないで押し黙っている私に、博士が頷きながら近寄った。
「どうやらお聞き及びがないようですので、パラレルワールド理論を、ごく簡単にご説明しましょう。いいですか?この理論は、私たちが暮らしているこの現実の世界に並行して、無数の世界が存在し、別の私たちが暮らしているという理論です。なんともSFチックなお話しかとお思いでしょうが、現在では、物理学の世界でも量子力学の多世界解釈や宇宙論のベビーユニバース仮説、超弦理論においてもパラレルワールドの存在が論じられています」
 私には、辛うじてカラフルな傘でないことだけは分かりはしたが、それ以外の説明はさっぱりのちんぷんかんぷんだった。そもそも私は、論理的な思考は嫌いな方ではないものの、文系、総務部と、今まで科学とは全く縁が無かったのである。
「この宇宙のどこかに、私たちの世界と同じような世界があって、もう1人の偽者の私が生活していると。そ、そういうことですか?」
「そうです、と言いたいところですが、違います。この宇宙ではなく、別の宇宙が存在しているのです。しかも、もう1つではなく、無数に。そして、無数の銀河があり、無数の地球があるのです。それと、私たちにとってはこの世界は現実ですが、私たちと同じ彼らにとっても、その世界は全て現実です。多少違っていても、偽者ではありません。むしろ、ほぼ同じ時間軸を、無数の私たちが並行して同時に暮らしていると、そう考えるべきですね」
 私は、今この瞬間に無数の私が、博士の説明に固唾を呑んでいる姿を想像してみた。
「ま、まるで、金太郎飴みたいだ」
 私の漏らした言葉に、博士がポンと手を打った。
「いやぁ、素晴らしい、言い得て妙だ!あなたは実に飲み込みが早い。全くそのとおり、どこを切っても私たちがいる。まさに、あなたの言うとおり金太郎飴です。ただし・・・」
「ただし?」
 博士は、ニコニコ笑いながら、後ろの装置をまた左手のボードでポンポンと叩きながら続けた。
「こいつで全く同じ私たちを見たところで、一つも面白くはありませんよね?」
 博士の言っている意味がよく理解できずにいると、博士は、私の顔を覗き込み更に続けた。
「さきほど私は、無数に存在している世界が、『多少違う』と申し上げました。いいですか?これは裏を返せば、あなたが過去の人生において二者択一、若しくはそれ以上の決断をした人生の分水嶺とも言うべき時、現在のあなたと違った決断をしたあなたがいる世界が、他に存在しているかもしれない、ということです。そしてこの装置は、その世界を探し出して、過去に遡り、投影することが可能な装置なのです」
「ま、まさか。そ、そんなことが、本当にできるんですか?」
「そこがノーベル賞級と言った所以です。検索に多少時間はかかりますが、1週間もいただければ、何とかなるでしょう」
「そ、そうか。人生をやり直してみるわけじゃなくって、他の世界の自分がやり直している人生を、私が『見る』というわけですね・・・」
「いやいやいや、全くもってあなたは、実に飲み込みが早い。キャッチコピーのこだわりにも気づいていただけるとは。いやぁ、畏れ入りました。みんなあなたのようなお客ばかりだと、こちらとしても楽なんですがね」
 その後私は、タカハシ女史からの料金等のシステムの説明と、博士からの2時間ほどの過去の分岐点の聞き取りの末、来週末に再度、この研究室を訪れることを約し帰路に着いた。
 料金は、申込み時、つまり今日この場で半金と、1週間後の検索完了時に半金とのことで、私の現在のへそくりの残高では、多少足が出てしまう。この1週間は、昼飯は公園で菓子パンだなぁ・・・

第4回「人生の分水嶺」へつづく




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posted by maruzoh at 10:18| Comment(0) | ◆割れ鍋に綴じ蓋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪