やさしい人に、そうでない人にも 
                         
                        あなたの心に、こころの言葉








【お勧めカテゴリー】

◆こころ王国「まりなさんと王様」  ジャズシンガーを目指すまりなさんが出会ったのは、自称ココロニア王国の国王でした。次第に解けてゆくココロニアの謎と共に、本当の優しさとあたたかさとは何かに気づいてゆくまりなさん。こころ王国物語の第1作です。

◆こころ王国2「王様と皇帝」  200X年5月。ココロニア王国を訪れたナポレオンそっくりの男は、自らを皇帝と名乗りました。皇帝とは何者?皇帝の真の狙いは何か?まだまだ知られていない王国の謎と、現代文明社会との闇とも言うべき組織との死闘。はらはらどきどきのこころ王国物語の第2話です。

◆ケンとチビと、そしてシロ  老いぼれ犬ケンに残された時間が少ないことを偶然知ってしまった生意気な飼い猫チビと、そこにふらりと現れた飄々とした野良猫シロ。犬と猫と猫の不思議な半年間が始まりました。大人に読んで欲しい憧話です。

◆ツノナシオニ  授業参観日に現れた転校生桃山太郎くんのお父さんは、なんと2メートルを超す長身に赤ら顔。そのお父さんの帽子が突風で飛ばされることによって巻き起こった大騒動。でも、それは、私たちにいろいろな問題を考え直させるきっかけでした。

◆割れ鍋に綴じ蓋 ―ワレナベニトジブタ― 《連載中》  若き日に画家を夢見ながら挫折し、現在は平凡な人生を送る中年の私、鈴木守45歳。そんな私が、ふとした切欠で自分探しの旅を始めることになるのですが、その旅とは天才的物理学者の発明した装置による過去と未来への時空と精神を超えた旅だったのです。

◆澤田節子作品集  平成21年6月8日に黒色腫で亡くなった僕の母が書き残してくれた小説、エッセイをご紹介させてください。ドラマチックな物語ではありません。どこにでもある日常のほんのふとした心の動きを、僕には書けない女性らしい目線で描いた作品たちです。

◆こどもたちの詩  まさに僕のこころの原点。童話を書こうと思った切欠が、こどもたちとの詩との出会いでした。痛いほどに眩しい感性。こどもは未完成の大人ではないと僕は思っています。

◆熱田丸蔵の歌  アコギ1本で弾き語りしてみようと思って鋭意努力中です。オリジナルを中心に歌っていきたいなと思っています。

◆YOU TUE ばあちゃんの子育て応援チャンネル  子育て中の方、これから子育てをする方に見ていただけたら嬉しいです。新米ママとパパにほんの少しでもお役にたてればと思い50うん歳にしてYou Tubeを始めてみました。毎月1日、15日に加えて時々増刊号も発信できたらと思っています。

2019年09月29日

ツノナシオニ 最終回 約束

ツノナシオニ.bmpサトルくんが僕の声に弾かれたように歩み出て、いきなり僕の手を握った。それにつられるようにして、百合子さんも、茂くんも、川崎さんも、みんなが集まってきたんで、僕の周りはまるで押しくら饅頭みたいになってしまった。力強く両手で握ったまま、サトルくんが言った。「俺、誰にも言わないからさ、お前がオニだってこと。クラスのみんなだって誰も言わないよ、絶対。だからさ、いろよ、このまま。帰るだなんて言わないでさ。俺たちのクラスにいろよ、なあ、桃山」(本文より)



ツノナシオニ 最終回 約束

 サトルくんが僕の声に弾かれたように歩み出て、いきなり僕の手を握った。それにつられるようにして、百合子さんも、茂くんも、川崎さんも、みんなが集まってきたんで、僕の周りはまるで押しくら饅頭みたいになってしまった。
 力強く両手で握ったまま、サトルくんが言った。
「俺、誰にも言わないからさ、お前がオニだってこと。クラスのみんなだって誰も言わないよ、絶対。だからさ、いろよ、このまま。帰るだなんて言わないでさ。俺たちのクラスにいろよ、なあ、桃山」
 百合子さんも僕らの手の上に綺麗な白い手を乗せて続いた。
「そうよ、桃山君。私、学級委員として、クラスの誰にもそんなこと言わせない。昨日のは、クラスみんなの見間違いで、誰もツノなんて誰も見ませんでしたって、それで押し通しちゃうのよ。もちろん、ここにいる父兄にだって言わせやしないわ。もしこのことがばれることになったら、クラスみんなで集団家出をするって脅しちゃいましょ。ほかには誰一人ツノなんか見てやいないんだし、全員で口裏を合わせれば絶対大丈夫よ。だって、せっかく仲良くなれたのに、2か月ちょっとでお別れなんて早すぎるわよ」
「俺も言わないよ、絶対」
「私も言わないから安心して」
「俺たち、仲間だからな」
「みんなで桃山を守ろうぜ」
 狭い路地が、クラスのみんなの声でわんわんと唸っている。僕は頭がぐらぐらしてしまって、まるで夢の中にいるようだった。僕は幸せだった。本当に幸せだった。
 人間って、なんて素晴らしい生き物なんだろう。みんなに出会えて、本当に良かった。
 またまた僕の瞳から、大粒の涙がぽろぽろと零れてしまった。でも、僕はある決意をしていた。
 僕の真一文字に結んだ口に気がついたんだろう、お父さんが僕を見て、大きく息を吐いてから頷いた。先生は無言で、そんな僕らを代わりばんこに見た。
 そして僕は、産まれて初めて、こんなにたくさんの大人や子どもの前で、まるで演説をするみたいに話を始めたんだ。
「み、みんな、本当にありがとう。僕、心からみんなに出会えて良かったと思ってる。サトルくん、百合子さん、さっきの言葉、僕は本当に嬉しかったよ。これからもずっとずっと、友だちでいてね。先生、僕は先生が大好きだよ。必ず手紙を書くからね。それから、佐藤のおじさんや大人の人たちも、お父さんの話を最後まで聞いてくれてありがとう」
「も、桃山ぁ」
 サトルくんの消えちゃいそうな声がしたけれど、僕は続けた。
「僕は帰ります。僕は、帰らなければいけないんだ。なぜかって?それは、僕がずっとみんなのことを騙してたからです。僕は本当はオニだったのに、ツノがないことを良いことに、人間の振りをして、嘘をついて、みんなに近づいた。ズルをして人間の世界に紛れ込んだんだ。
 確かにツノのないオニと人間は見分けがつかないけれど、でも僕は、いつかは人間じゃないことがばれちゃうんじゃないかって、そんな不安がずっと心の片隅にあって、本当に心が休まることなんて、この2ヶ月間、1度もなかったような気がする。
 でも、ズルをしたんだから、それは当たり前なんだよね。もし僕が、これからもズルをし続けて、ずっとここに居て、先生やみんなと、もっともっと仲良くなってしまったとしたら、その不安は、もっともっと、どんどん大きくなってしまうだろうし、みんなの心にもきっと、同じように不安ややましさみたいな、こんなにいやな思いが膨れ上がってしまうに違いないんだ。僕はこんなに良くしてくれたみんなに、そんな思いをさせたくない。
 だから、僕は今日、お父さんと鬼が島に、帰ります。でも・・・」
「でも?」
 僕は、百合子さんに笑いかけた。
「そう、でもこれは、サヨナラじゃない。ここからを始まりにしようと、僕は思ったんだ。島を出る時、お父さんは言ったよね。太郎には、ツノナシオニだからこそできる何かがあるんじゃないかって。
 僕はね、この人間の世界で、自分にしかできないことを見つけたんだ。島で僕は、もっともっと、もっともっと勉強をしてね、今度は僕、正真正銘のオニとして、オニの僕として、オニと人間の架け橋になる為に、堂々とこの日本に、この街に、このクラスの先生とみんなの前に、いつか必ず戻って来てみせる。
 今度は見せ掛けとか、外見で騙すんじゃなくって、その時の僕にツノがあったとしても、無かったとしても、僕、オニの代表として堂々と、正面から来てみせる。だから、これはサヨナラじゃないんだ。これからが僕とみんなの始まりなんだ。僕、みんなに約束するよ」
 僕は自分が引っ込み思案だったことさえ忘れてしまっていた。
 洟を大きくすすり上げたサトルくんが、にこっと笑ってから、やけに大きな身振りでパチパチと拍手を始めた。百合子さんが涙を拭ってそれに続いた。
 田中さんも、宮本くんも、みんなが拍手をしてくれた。西原先生も、お父さんも、そして、トカゲ眼鏡の百合子パパも一緒だった。
 拍手は高く低く、それはまるで寄せては返す鬼が島の海辺の波の様に、いつまでも途切れずに鳴り止むことはなかった。
 僕の頭のてっぺんが、なぜか、ちょっとムズムズした気がした。

《おわり》


◆「ツノナシオニ」 目次へ




☆ランキングにチャレンジ!☆
にほんブログ村さん、人気ブログランキングさんに挑戦中。「うふふ」とか「ほろっ」とか「なるほど」と感じたら、押してくださいね。

にほんブログ村 小説ブログ 小説家志望へ
にほんブログ村さんへ


人気ブログランキングさん 芸術・人文へ



posted by maruzoh at 17:02| Comment(0) | ◆ツノナシオニ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


   【maruzoh's profile】
   maruzoh live.jpg

名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪