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2019年09月22日

ツノナシオニ 第26回 仲間

ツノナシオニ.bmp駆けて来る。みんなが、クラスのみんなが、駆けて来る。5人?10人?いや、もっといる。もっともっといる。「おい、こっちだ。この角を曲がったとこだよ、きっと」「あっ、桃山ぁ!」「西原先生!」それまで静まり返っていたアパートの前の路地は、今度は大人を掻き分けて入ってきた子どもたちで、埋め尽くされてしまった。クラスのほとんど全員が、息を切らしてそこにいた。そんなクラスの仲間たちを見たら、僕の瞳からぼろぼろと涙が溢れ出して止まらなくなってしまった。(本文より)



ツノナシオニ 第26回 仲間

 駆けて来る。みんなが、クラスのみんなが、駆けて来る。5人?10人?いや、もっといる。もっともっといる。
「おい、こっちだ。この角を曲がったとこだよ、きっと」
「あっ、桃山ぁ!」
「西原先生!」
 それまで静まり返っていたアパートの前の路地は、今度は大人を掻き分けて入ってきた子どもたちで、埋め尽くされてしまった。
 クラスのほとんど全員が、息を切らしてそこにいた。そんなクラスの仲間たちを見たら、僕の瞳からぼろぼろと涙が溢れ出して止まらなくなってしまった。
 でも、これは僕が泣き虫だからじゃないと思う。僕でなくったって、きっと誰だってこんな時は、感動で泣いてしまうに違いない。
 先頭にいたクラスで一番のお調子者のサトルくんが、ちょっと照れてるみたいに頭を掻いて僕に言った。
「ほら、昨日の参観日で、俺、最初にお前のお父さんのこと茶化したりしちゃっただろう?で、結局、あんなことになっちゃってさ。だから今朝、お前んちに行ったんだ、謝りにさ。そしたらお前のおじいちゃんが、急な転校が決まって先生のところにお別れの挨拶に行ったって言うんで、俺、びっくりしちゃってさ。そんな終わり方、俺、絶対嫌だったから」
 僕はサトルくんの気持ちがあんまり嬉しいんで、頭の芯がジーンとしてきちゃった。
「でも、俺、どうしたら良いかわかんなくってさ。学級委員の百合子んとこに相談したんだよ。そしたら、さすが百合子、頭がいいや。連絡網使って回してくれたんだよ、クラス中に」
「ゆ、百合子が?」
 それを聞いて、なんとも変な声を出したのは、トカゲ眼鏡だった。そう、トカゲ眼鏡の一人娘っていうのは、学級委員の佐藤百合子さんのことだったんだ。
 その百合子さんが言った。
「サトルなんかは気づいてないだろうけど、桃山くんって、女子の中では結構人気あったのよ。がさつな他の男子と違って優しそうだしね。それに私も、サトルと同じよ。昨日は学級委員なのに一番大きな声上げちゃったり、慌てて机倒しちゃったりして、桃山くん傷つけちゃったんだろうなって。私も謝りたかったの。桃山くん、ごめんね」
 僕を見つめる百合子さんの横でサトルくんがぺこりと頭を下げた。
「桃山、昨日はごめんな」
 それが切欠になって、クラスの仲間の声が、まるで輪唱のように聞こえてきた。
「桃山、ごめんな」
「桃山君、ごめんね」
「桃山君、ごめんなさい」
「桃山ぁ、悪かったな」
「桃山のお父さん、ごめんなさい」
 お父さんにまで声を掛けてくれる仲間もいる。
「み、みんな・・・」
 僕は、もうただただ嬉しくって、言葉にならない。お父さんも、先生も、うんうん頷きながら泣いている。トカゲ眼鏡の百合子パパも、ハンカチでレンズの奥の瞼を拭っているみたいだ。
「ありがとう、みんな」
 涙を拭った僕は、精一杯明るい声で、そう叫んだ。

第27回「約束」へつづく




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posted by maruzoh at 14:54| Comment(0) | ◆ツノナシオニ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪