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2019年06月16日

ツノナシオニ 第13回 暴言

ツノナシオニ.bmpトカゲ眼鏡が笑うのをやめて、少し考えるようなそぶりをしている。どうやら、先生の言っていた「暴言」というのが、どれだったのかを思い出しているみたいだ。なかなか思い出せないところを見ると、僕ら親子への悪口は、1つや2つだけじゃあなかったに違いない。「佐藤さん、まさか自分が言ったことを忘れたんじゃないでしょうね」先生がそう言ってまた1歩進むと、トカゲ眼鏡がまた1歩退く。こんな路地裏には似合いやしないけど、まるで息の合った社交ダンスのステップみたいだ。(本文より)



ツノナシオニ 第13回 暴言

 トカゲ眼鏡が笑うのをやめて、少し考えるようなそぶりをしている。どうやら、先生の言っていた「暴言」というのが、どれだったのかを思い出しているみたいだ。
 なかなか思い出せないところを見ると、僕ら親子への悪口は、1つや2つだけじゃあなかったに違いない。
「佐藤さん、まさか自分が言ったことを忘れたんじゃないでしょうね」
 先生がそう言ってまた1歩進むと、トカゲ眼鏡がまた1歩退く。こんな路地裏には似合いやしないけど、まるで息の合った社交ダンスのステップみたいだ。
「あなたは、ツノがあったから彼らは人間ではない、そして人間でない以上人権もなく、教育を受ける権利がないと言いましたね」
 先生の質問に対してトカゲ眼鏡は、へへんというような顔をして、また余裕を取り戻したように、こう言った。
「言いましたよ、言いましたとも。その発言になにか、生物学上、法律上の間違いでもありますかな?」
「法律上では、佐藤さん、残念ながらあなたの言うことに間違いはないかもしれません」
「じゃあ、私の言ったのは、法的根拠に基づいた発言、つまり暴言でもなんでもないわけだろうよ」
 トカゲ眼鏡はまた、口元を歪めるようにして、金属みたいに冷たく笑った。
「いえ、僕が暴言と言ったのは、その後の発言です。思い上がったあなたが言った彼らへの謂れのない中傷、いえ、それは彼らだけでない。多くの人たちの尊厳を傷つける言葉です」
「はて?」
 トカゲ眼鏡は、全く思い出せないといった風に首をかしげて、空を仰いで見せた。すぐに思い出せないというのは、残念ですがあれは口が滑ったとか、思いつきで言ってしまって後悔しているというのではなく、やはりあれは、あなたの心に根付いた考えだったんですね。あなたは、こう言ったんですよ」
 先生がまたまた一歩進んで、同じようにトカゲ眼鏡が一歩退く。
「ツノだとか、尻尾だとか、余分なものがついていたり、本来あるべきものが欠けているなんてのは、これはもう人間じゃないし、そんなものは、生物として不完全、ふ、不良品、欠陥品だと、あなたは、そう言ったんですよ」
 トカゲ眼鏡は、伏せ目のまま、やれやれそんなことかとでも言いたげに、顔を左右に振った。
「何を言い出すのかと思ったら、先生、そんなことでしたか。くくくくくっ。ああ、言いましたよ。言ったとも、言ったがどうしたね。欠陥品を欠陥品と言って、何が悪い?だって、まともな人間じゃなきゃ、欠陥品だろ?」
「あ、あなたって人は」
 その瞬間、先生の顔色が変わった。
 先生はトカゲ眼鏡に殴りかかろうとしたんだろう、右手の拳を振り上げてまた身を乗り出した。
 でも、その後ろから大きな大きな人影が先生を羽交い絞めにしてしまった。
「おやめなさい、殴る価値もないでしょう」
 その大きな人影の頭には、昨日風で飛ばされてしまった帽子がちょこんと乗っていた。
そう、それは、僕の横にいるはずのお父さんだった。

第14回「謝罪」へつづく




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posted by maruzoh at 15:40| Comment(0) | ◆ツノナシオニ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジャー・ウォブルさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪