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2019年04月21日

ツノナシオニ 第3回 帽子

ツノナシオニ.bmpクラスのざわめきの中、お父さんはぺこりと先生に頭を下げた。担任の西原先生は、お父さんを頭からつま先まで順番に舐めるようにして見ると、引きつったような笑顔のままで会釈をした。先生が、「オ、オッホン」とわざとらしく一つ咳払いをする。きっと、みんなを静まらせようとしたんだろうけれど、逆にざわめきは、最初のひそひそ話しからだんだんと大きくなっていった。(本文より)



ツノナシオニ 第3回 帽子

 クラスのざわめきの中、お父さんはぺこりと先生に頭を下げた。担任の西原先生は、お父さんを頭からつま先まで順番に舐めるようにして見ると、引きつったような笑顔のままで会釈をした。
 先生が、「オ、オッホン」とわざとらしく一つ咳払いをする。
 きっと、みんなを静まらせようとしたんだろうけれど、逆にざわめきは、最初のひそひそ話しからだんだんと大きくなっていった。
「で、でっけえなぁ」
「プロレスラーみたいだね」
「縞の背広なんて、派手ねぇ」
「お酒飲んでるのかな?顔、真っ赤だよ」
「ねえねえ、誰のお父さん?」
「誰、誰?」
 こうなるだろうとは覚悟はしていたけれど、やっぱり僕のお父さんは、見かけだけでもみんなのお父さんとは、だいぶ違っているようだ。
 そのうち、クラスのみんなは、先生が手をパンパンと叩いて叫ぶように「はいはい、静かにして」というくらいまで、騒ぎ出してしまった。
 でも、いくら先生が叫んでも、みんなは「誰?」「誰?」と、ちっともお喋りをやめようとしない。僕はみんなのその声を聴く度に、心臓がドキドキと早くなって、恥ずかしさで下を向いてしまった。
 それでも僕は、どうしてもお父さんが気になって仕方なく、ちらっと盗み見てしまう。するとお父さんがそれに気がついて、笑いながら小さく手を上げた。
 みんなの視線が、一斉にその先を追っていく。そして、やがてそれは、お父さんと同じように真っ赤になった僕の顔に突き刺さった。クラスが、蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。
「えーっ?桃山くんのお父さんだったの?」
「以外―っ!」
「ひょろひょろの青っ白い桃山の父ちゃんが、プロレスラー?」
「お相撲さんかもしれないよ」
「そうだそうだ、そうに決まってる。だから帽子なんか被ってるんだよ」
「帽子の下は、ちょんまげかぁ?」
 僕は、恥ずかしくて真っ赤になったまま俯いていたけれど、その一言は、心臓が止まってしまうかと思うくらい僕をどきりとさせた。
 先生の「みんな静かに、静かに」という声がかき消されてしまうくらいの騒ぎの中、クラスで一番のガキ大将のサトルくんが、席から立ち上がってこう言った。
「桃山くんのお父さん、お相撲さんでしょ?帽子とって見せてちょんまげ?」
 大爆笑の後、一瞬クラスの騒ぎが収まって、みんなの視線がお父さんの帽子に集まった。お父さんは、どうしてらいいのか、困ったような笑顔のままだった。
 ちょうど、ちょうどその時だった。
ビュウウウゥゥゥ
 南側の窓から、とても強い風が吹き込んだ。とても、とても強い風だった。
 その風に煽られて、お父さんの帽子が、枯葉が舞うみたいに宙を飛んだ。
 帽子の無くなったお父さんの頭には、ツノが1本、生えていた。

第4回「混乱」へつづく




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posted by maruzoh at 10:27| Comment(0) | ◆ツノナシオニ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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   【maruzoh's profile】
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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジャー・ウォブルさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪