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2018年06月05日

その4 温かな一族/こころ王国「まりなさんと王様」

まりなさんと王様.png流れる汗にまみれて左手の痛みをこらえながら、右手だけでピアノを弾く必死の形相の吉田さん。それをサポートする文部大臣は、まるで吉田さんの左手になったようでした。本番前のリハーサルだけで、吉田さんのちょっとした癖までを、完璧、まさに完璧にコピーしてのけたのですから、文部大臣のそのテクニックといったら、まったく驚くべきものです。(本文より)



こころ王国「まりなさんと王様」 
その4 温かな一族


 ダンテBARでのFREE BIRDSの結成一周年記念ライブは、まさにマスターの思惑どおり、大盛況のうちに終わりました。
 流れる汗にまみれて左手の痛みをこらえながら、右手だけでピアノを弾く必死の形相の吉田さん。
 それをサポートする文部大臣は、まるで吉田さんの左手になったようでした。
 本番前のリハーサルだけで、吉田さんのちょっとした癖までを、完璧、まさに完璧にコピーしてのけたのですから、文部大臣のそのテクニックといったら、まったく驚くべきものです。
 しかも、彼のピアノには、テクニックのある人にありがちな、気取りとか、高慢さなんてかけらも感じられない、いつかどこかで感じたようなあたたかさや懐かしさの伝わってくるものでした。
 ドラムスもベースも吉田さんの奮闘にに引っ張らて、いつも以上の熱演でノリまくり、会場は完全な一体感と大歓声に包まれたのでした。
 マスターは?そう、マスターは、その魂の高揚に触れたからでしょうか。まるで取り憑いていた悪霊が落ちたかのように、いつもの冗談好きのマスターに戻っていました。
 いえ、それは決して、倒産の危機から脱した安堵感だけがもたらした、打算的な変化ではないように思えてなりません。

 さて、大成功のダンテBARのもう一方、まりなさんのHART LANDのライブは、一体どうだったのでしょう。

 人気(ひとけ)の無い公園のベンチに、まりなさんがポツンといます。
 まりなさんは、泣いていました。悔しくって、悲しくって泣いていました。
 自分の力の無さと、緊張と、そして何よりも、今日の午後はいろんなことがあり過ぎて、まったくライブに集中できずに自分の思うような演奏ができなかったのです。
 ピアノはとちるし、歌詞は間違えるし、音程は外すし・・・
 客席が沸くことが無かったどころか、まりなさんが演奏を終えて挨拶をしても、客席からはパラパラとまばらな拍手しか起こりませでした。
 当然、HART LANDの店長の評価も低かったに違いありません。
 まりなさんは、もう消えてなくなってしまいたいような気持ちでした。
「あったかい紅茶、ミルクティー買ってきたよ」
 丸蔵くんが、自販機で買ってきた紅茶をまりなさんに手渡しましたが、まりなさんは、まだ泣き止みません。
 紅茶に口をつけると丸蔵くんは、はあっと白い息を吐いてからまりなさんに言いました。
「今日のことは、もう忘れちゃおうよ。 次、頑張ればいいんだしね。そうだな、次は「朧月夜」も歌ってほしいな」
 それでも、まりなさんは、ずっと泣き続けています。
 丸蔵くんは、それからもまりなさんに何度も話しかけて、励まし続けたのですが、まりなさんは泣くばかりで、一言も話をしようともしません。
 と、その時です。ふと「朧月夜」のメロディーが、どこからともなく流れてきました。
 ああ、丸蔵くんのケイタイの着メロのようです。
「あっ、執事長さん、お疲れ様です。 そっちのライブはどうでした?えっ、成功? 文部大臣さんが?へえ、それはよかった。えっ?国王が?うん、代わってください。 あっ、父さん、はい、丸蔵です」
 どうやら、ダンテBARにいる王様の執事さんかららしいのですが、今、確かに丸蔵くんは、王様に代わる時に、王様のことを「父さん」と、呼んだような気がしたのですが・・・。
「お疲れ様でした。 上手くいってよかったですね。父さんは、これからどうされますか?はい、僕はまりなさんと一緒ですが」
 泣いているまりなさんにも、丸蔵くんがケイタイで、王様のことを「父さん」と言っているのが、はっきりと聞こえました。
 まりなさんは、それまで相変わらず泣きじゃくっていましたが、丸蔵くんと王様が親子=丸蔵君が王子だということにあんまりびっくりしたからなのでしょう。
「ひっく!」
 と、まるでふんづけられたガマガエルがしゃっくりでもしたようなとっても不思議な声を出してしまいました。
 しかも、その声がひどく大きかったものですから、
「ええ、そ?そ、そう・・で・・・、そうです。ちか、ちか、近くの公園で・・・」
 今度は丸蔵くんがびっくりしてしまいました。
 まりなさんはそれが泣くことさえ忘れるくらい恥ずかしくって、耳たぶまで真っ赤になってしまいました。
「まりなさんが、気を落としちゃって、ええ、そう、ずっと泣き通しで・・・」
 でも、丸蔵くんは、まりなさんに気を使ってか、そんな声はちっとも聞こえなかったという素振りで、鹿爪らしい顔をして王様と話し込んでいます。
 そんな丸蔵くんの一生懸命な姿を見ていたら、不思議なことにまりなさんは、なんだかそれが、急に可笑しく思えてしまいまいました。
「くくっ、くすくすくす・・・・」
 そんなまりなさんを見たら丸蔵くんも、やっぱり、自分の眉間に皺を寄せて見せている姿が、たまらなく可笑しくなってしまいました。
「ぷっ!くくくっ、はっはっは・・・、ははははははは・・・」
「ふふふふ、あはははははは・・・」
 いえ、それ以上に丸蔵くんは、まりなさんが泣き止んでくれたことがとっても嬉しかったのです。
「わっはっははははは。い、いや、す・・みません。い、いえ、こっ、こっちの話で・・・。くくくっ、す、すみません。ふーっ。 もう、だ、大丈夫です、はい、お待ちしてます」
 丸蔵くんは、なんとか笑いをこらえて電話を切りましたが、2人でちらっと顔を見合わせると、
「ぷ――っ!くくくく、ま、まりなさんったら、ははは、笑うんだもの・・・」
「ふふふ、丸蔵さんだって、あははははは・・・」
 また2人は、しばらくの間、お互いを指差しながら笑い合っていました。
 そして、おなかが痛くなるほど笑って、笑い疲れて、2人はまた、顔を見合わせました。
 そして、丸蔵くんは、ゆっくりと言いました。
「よかった。これだけ笑えたら、もう大丈夫だよね。僕の父が、いや、ココロニア国王が、これからここにやってきます。そして、僕には、国王が来る前に、どうしても、やっておかなければならないことがあります」
 まりなさんは、ココロニアのこと、王様のこと、金貨のこと、そして丸蔵くんのことが知りたくて、質問をしようと大きく息を吸い込みましたが、丸蔵くんは、それを制して続けました。
「きっと、いろいろな疑問や謎があるんでしょう?うん、わかります。まりなさんの質問には、この後すべてお答えします。でも、その前に1つだけ僕からお願いがあります」
「お願い・・ですか?」
 こっくりと頷いた丸蔵くんがポケットから出したものは、公園の暗い街灯の光の中でさえまぶしいほどに輝く、指輪でした。
「まりなさん。 僕と結婚してください」
「・・・・・・・・」
 まりなさんはもう、何がなんだかわからなくなってしまいました。あんまりびっくりしたものですから頭の芯がぼ〜っとしてしまい、まりなさんは気を失ってしまうのかと思いました。
 今日は、まりなさんにとって、なんて日だったんでしょう。
 事故、マスターの豹変、王様の再登場。ライブの失敗。
 昼過ぎからこっち、僅か半日足らずの間に、次から次にとんでもないことがまるで降って湧いた様に起こって、1年、いえ10年分の事件がいっぺんに押し寄せたかのようでした。
 でも、その中でも、やっぱりまりなさんが1番驚いた極めつけは、今しがたの、丸蔵くんのプロポーズでした。
 どきどきどきどき・・・・・
 胸の鼓動を抑えることもできないまま、まりなさんは、やっとの思いで口を開きました。
「わ、わたし・・・、丸蔵さんのこと、なにも知らないし、 き、急にそんなこと言われても、お答え・・できま・・せん・・・・」
 そう言えば、まりなさんは丸蔵くんのことを、何一つ知りませんでした。
 いくつなのか・・・ 
 どこに住んでいるのか・・・
 どんなお仕事をしてるのか・・・
 まりなさんは思い返してしてみましたが、自分が丸蔵くんのことで知っているのは、たった1つ、火曜日の夜、あの店の前で歌を歌っているということと、どうやらココロニア国王の息子らしいということだけです。
 これでは、まりなさんでなくったって、答えられるわけありません。
 丸蔵くんは、立ち上がって言いました。
「いえ、別に、今すぐ返事をいただけるとは思っていません。僕や父のこと、ココロニアのことを少しずつ知ってもらって、その上で返事をもらえればと思っています。王国にも、是非来てもらってね・・・」
 丸蔵くんは近くのブランコに腰掛けると、静かに話し始めました。
「まりなさんは、僕のプロポーズを唐突で、思いつきのように考えているかも知れないけれど、実は、僕がまりなさんのことを知ったのは、もう、半年以上も前のことなんですよ・・・」
 丸蔵くんは、ゆっくりとブランコをこぎながら続けました。
「まりなさんが、ダンテBARで歌い始めた頃に、ちょうど僕もこの街の公園で、歌い始めたんです。そして、この街での僕の作った歌に初めて立ち止まってくれたお客さんが、まりなさん、あなただったんです」
「え、ええ。わたしも今、考えてたんです。丸蔵さんの歌を初めて聞いたのは、いつ頃からだったろうかって・・・・」
 まりなさんの言葉を聞いて、丸蔵くんは、とっても恥ずかしそうに言いました。
「僕は、日付だって覚えていますよ。5月6日、飛び石連休の真ん中の金曜でした。あの頃僕は、西口公園の噴水の近くで歌っていました。僕の歌は流行とはかけ離れていますから、やっぱりそれまでは誰も立ち止まってくれなかったんですが、まりなさん、あなたは、立ち止まって僕の歌を最後まで聴いてくれたんです」
 こんどは、丸蔵くんが真っ赤になって言いました。
「僕はどうやら、その時に、その・・、まりなさんに、ひ、一目惚れをしてしまったらしい」
 まりなさんも、何か思い出したようです。
 「確か、そう、5月の連休中はお店がお休みだったんで、お友達と西口に、食事に行った気がする」
「僕は、またそれからも、まりなさんに遭えるんじゃないかと思って、あれから暫くあの場所で歌ってたんですが、あなたはそれ以来、ちっとも姿をみせてくれなかった。それが、ふとしたことから、あなたが東口のダンテBARで歌っているってことを知って、僕は、あなたのお店からのあなたの家までの帰り道、あの旅行代理店のシャッターの前に歌う場所を変えたんです」
「えっ?じゃあ、わたしが、丸蔵さんの歌を聞くようになったのは・・・」
「そう、偶然なんかじゃないんです。僕は、あなたに会いたくて、そして聴いてもらいたくて、あの場所で歌っていたんです。ずっと、あなたのためだけに」
 まりなさんは、丸蔵くんが話している間中、ずっとドキドキし通しでしたが、やっとの思いで、
「あ、あの、わたし、ココロニア王国のことが、知りたい・・・」
 と小さい声で言いました。
 丸蔵くんは、小さく頷くと話を続けました。
「ココロニアのことを話すには、僕の父と母の出会いから話さなければなりません。そして王国の始まりは、2人の名前を抜きにしては語れないのです。まりなさんは、父の名前、覚えていますか?」
 まりなさんは、ポーチの中からあの霧雨の晩にもらった名刺を取り出しました。

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「アツタ・・・、ウミゾウさん?」
 丸蔵くんは、まりなさんの言葉に首を横に振ると言いました。
「ウミゾウではなくて、カイゾウと読みます。アツタ、カイゾウです」
「アツタカイゾウ?」
 まりなさんは、言葉を失ってしまいました。
「そう、あったかいぞう、ふふふ、温かいぞう、です」
 こんな駄洒落のようなふざけた名前の話が、いったいココロニア王国と何の関係があるというのでしょう。でも、丸蔵くんは、いたってまじめに話を続けます。
「地方から上京した父は、以前は貧しい絵描きでした。絵はちっとも売れず、いつもお金はありませんでしたが、親分肌で、誰にもやさしい父は、たくさんの人たちに慕われていたそうです。20歳の時、父は作家志望の母と運命的な出会いをして、一瞬で恋に落ちてしまいました。ははは、一目惚れは、熱田家の血統、遺伝なんでしょうかね」
 丸蔵くんは、照れて小さく笑いました。
「母は旧姓を佐々木、名は丸代と言いました。母も父のやさしさに惹かれたのでしょう、2人は愛し合い、そして結婚をしました。この結婚が、父と母の人生を変えたんです。母が、父と結婚することによって、姓を佐々木から熱田に変えることにより、熱田丸代、あつたまるよ、 そう、温まるよ、になってから・・・」

(温かいぞう〜、温まるよ〜) 

「やさしく、温かな父でしたが、その実、それまで人に対する温かさというものを、特別意識したことなどありませんでした。しかし、この結婚を機に「温かさ」はこの2人、夫婦の礎と言うべきものになったのです。苗字などただの偶然と人は言うかもしれませんが、父と母は、これは運命に違いないと考えました。そして、僕が生まれました。僕は、両親の一文字ずつをもらい、丸蔵と名づけられました」

(温かいぞう〜、温まるよ〜、温まるぞう〜)

 そこまで話して、丸蔵くんは、冷めてしまった紅茶をごくっと飲み干しました。
「あの霧雨の夜に父がダンテBARに行ったのは、東京で1人暮らしをしている僕が、父に手紙を出したからです。結婚したい女性がいます、と僕は父に宛てたんです」
「・・・・・・・・」
「父は、まりなさんのことをたいへん気に入っていました。あれだけの歌を歌える人なら、間違いないって。そして何より、父も僕同様、僕とまりなさんの、この出会いが、父と母が出会った時のように、やはり運命的であることを、とても驚いていました。まだ、気づきませんか?まりなさん」
 まりなさんは、何を言われているのかさっぱりわからず、ぽかーんとしていました。
「山田麻里奈さんが、僕と結婚すると、熱田麻里奈。アツタマリナ、あったまりな、温まりな・・・・」

(温かいぞう〜、温まるよ〜、温まるぞう〜、温まりな〜)

その5へ続く




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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
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