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2018年05月22日

その2 丸蔵くん/こころ王国「まりなさんと王様」

まりなさんと王様.pngその若い男の人が歌っているのは、大概は火曜の夜でした。駅から100メートルほど離れた、旅行代理店のシャッターの前で、焦げ茶色の古いアコースティックギターとブルースハープで歌っています。正直に言ってしまうと、あまり上手ではありませんでしたが、ちょっとだけハスキー掛かった声は優しそうで、その彼の歌う曲は、初めて聴く曲なのになぜか懐かしくて、人恋しげな心をやさしく包み込むような不思議な魅力がありました。(本文より)



こころ王国「まりなさんと王様」 

その2 丸蔵くん


 その若い男の人が歌っているのは、大概は火曜の夜でした。
 駅から100メートルほど離れた、旅行代理店のシャッターの前で、焦げ茶色の古いアコースティックギターとブルースハープで歌っています。
 正直に言ってしまうと、あまり上手ではありませんでしたが、ちょっとだけハスキー掛かった声は優しそうで、その彼の歌う曲は、初めて聴く曲なのになぜか懐かしくて、人恋しげな心をやさしく包み込むような不思議な魅力がありました。
 今日も、11月とは思えないほど冷え込んだ夜中に、毛糸の帽子を目深にかぶって、白い息を吐きながら、彼は、歌っています。
 少し遠目から聴いているたった1人だけのお客さんは、お仕事を終えた帰り道のまりなさんでした。赤い自転車を脇に停めて、白いダウンのコートの襟を立てて聴いています。

ときめきをひとつ 掴もうとすると
風がひとつ すり抜けてゆく
見果てぬ夢と 諦めかけると
誰かがひとつ 肩を叩く

Oh! STARDUST DREAM 満天の星
夢を夢のままで終わらせやしない
Oh! STARDUST DREAM お前に誓おう
お前の愛した男は 明日を見失わない

確かなものがどこを探しても
見当たらない寒い時代に
熱い想いとお前
このふたつを 信じてゆこう


ときめきがひとつ 零れ落ちて
溜息をひとつ こっそりとついた
いつものことと 悲しく笑うと
なにかがひとつ 崩れ落ちる

Oh! STARDUST DREAM 満天の星
このままここにいようなんて思ってはいないさ
Oh! STARDUST DREAM お前と歩こう
ふたりが愛した時代を もう振り返らない

確かなものがどこを探しても
見当たらない寒い時代に
熱い想いとお前
このふたつは 信じられる

「トキメキヲヒトツ」 作詞曲 丸蔵

 バラードが終わりました。
 この曲も、やっぱり初めて聴くのに懐かしくて、暖かい曲でした。
 まりなさんは、思い切って、初めて彼に話しかけてみました。
「あの・・・」
 彼は伏目がちにしていましたが、突然のまりなさんの言葉に、びっくりしたように顔を上げました。
 ぽおっと頬に赤みがさしたように見えたのは、けっして気のせいではないでしょう。
「す、素敵な曲ですね。オリジナルの曲ですか?」
 彼はドギマギしているのか、照れくさそうに笑って、
「あ、ありがとう。ええ、随分前に創ったんですが、『トキメキヲヒトツ』って歌です」
 そう答えた彼の切れ長の目が、嬉しそうにキラキラ輝きました。
「な、何て言うのかな、初めて聴くのに懐かしいって言うか・・・」
「そ、そうですか?僕、童謡とか、昔の唱歌とかが好きなんです。ちょっと時代遅れなんでしょうかね。そのせいかな?流行りの今風の曲って、作れないし、歌えないんですよ」
 それを聞いて、まりなさんは、すっかり納得がいきました。
(そうなんだ、彼の曲から受ける懐かしさとか優しさって、そこから来てたんだ・・・)
 まりなさんは、なんとなく、本当になんとなく、この人なら、わたしの歌がわかってもらえるようなそんな気がしました。
「あ、あの、実は、私もダンテBARって小さなジャズバーで歌ったりしてるんですが、24日の月曜、HART LANDって知ってますよね、あそこで初のライブをやることになったんです。あの、よかったら聴きにきてください。わたしのステージネーム、氷川まりなって言います」
 まりなさんも、照れくさそうに言うと、彼は、ちょっと驚いて、でも本当に嬉しそうに、小さく笑いました。
「それは、おめでとう。じゃあ、是非、聴きにいかなきゃ。僕、まん丸の丸に大石内蔵助の蔵で、丸蔵っていいます」
 と、笑いました。
「そうだ、まりなさんの初ライブ記念に、僕の大好きな曲、1曲歌わせてください」
 そういうと、丸蔵くんは、ブルースハープを吹いて、静かにギターの弦を爪弾き始めました。
「えっ?」
 まりなさんは、思わず声を上げてしまいました。
 だって、丸蔵くんが歌い始めた曲というのは、あの霧雨の夜、王様にリクエストされた曲、そう、「朧月夜」だったんですから。
 丸蔵くんの「朧月夜」は、まりなさんのそれとは、全く趣(おもむき)が違いました。
 ちっとも洗練されていませんし、悲しげなのに、でも寂しくはないのです。むしろ小さな暖かさが、伝わってくるようです。
 敢えて例えるとしたなら、まりなさんの「朧月夜」が、ちょっとお洒落な切子細工のグラスだとすれば、丸蔵くんのそれは、陶器の湯飲みの持つあたたかさでしょうか。
 曲が終わってまりなさんの拍手が、すっかり人気(ひとけ)のなくなった街角に響きました。
 まりなさんは、ドキドキしながら丸蔵くんに聞いてみました。
「ありがとう、すごい素敵でした。じ、実は私も、1ヶ月前の霧雨の夜にこの歌を歌ったんです。ある人からリクエストされたんです。し、信じてもらえないかもしれないけれど、その時、この歌をリクエストしたのは、ほ、本物の王様だったんです」
 丸蔵くんは、一瞬きょとんとした顔つきをして、そして、ふっと笑いました。
「いっ、いえ、決して冗談なんかじゃないし、私の頭がどうかしてる訳でもないんです。本当なんです、王様だったんです。信じられないかもしれないけど、本当なんです。で、同じ歌の好きな丸蔵さんなら、も、もしかしたら、何か、その王様のこと、知ってるかも・・・」
 まりなさんは、真っ赤になってしまい、最後は、口ごもるように話を途切れさせてしまいました。
(初めて話をした人だって言うのに、私ってなんて馬鹿なこと聞いてしまったんだろう)
 まりなさんは、口を衝いて出てしまった言葉を悔やみました。
 これでは、なんて変な人だろうと思われても仕方ありません。
 まりなさんは真っ赤になってしまった顔を覆った指の隙間からこっそりと丸蔵くんを見てみました。
 ところが、驚いたことに丸蔵くんは、そんなまりなさんに平然と、こう言ったのです。
「王様のことなら知っています。ココロニア国王ですよね。あなたのお店で、この曲をリクエストしたことも聞きましたよ」
 まりなさんは、すぐに声も出せないほどびっくりしました。
「あ、あなたは、王様の・・・」
 数秒間、固まってしまったまりなさんが、やっと口を開いたその時です。
「お〜!いたぞ、いたぞ〜っ」
「こんなとこにいやがったぁ」
 いつの間にやって来たのか、酔っ払いのおじさんたちが4人、まりなさんと丸蔵くんの間に割って入ったのです。
「この兄ちゃんはなぁ、ヒック、今時の若いもんには珍しくなぁ、日本人の心ってもんを知ってるんだ〜っ、ヒック」
 ネクタイを額に巻いた眼鏡のおじさんが、他のおじさんたちに、呂律の回らない口調で説明しています。
「課長。懐かしくて、泣かせる歌を、聞かせてくれるってのは、このあんちゃんですかぁ」
 やっぱり呂律が怪しい部下らしきおじさんたちが、ネクタイおじさんと一緒に囃し立てます。
「なあ、にいちゃん。こないだの、ほら、七つの子、またやってくれないかぁ?」
「いいっすねえ、課長。からすの勝手でしょ〜って、あれですよね」
 丸蔵くんは、ニコッと笑うと、目でまりなさんに何かを語りかけました。
(じゃあ、王様のことは、いずれまたゆっくりと話をしましょう)
 まりなさんには、丸蔵くんがそう言っているように見えました。
 丸蔵くんのギターが七つの子を奏で始めます。
 まりなさんは、あの勢いのおじさんたちに勝負を挑んでも勝ち目はないと思い、
(きっと、教えてくださいね、きっとですよ)
 と、目で返しました。
 まりなさんは、赤い自転車のハンドルを握ると、もう1度丸蔵くんの方を振り返ってから、ゆっくりとペダルをこぎ始めました。
「からす なぜ泣くの からすは山に」
 丸蔵くんのあのハスキー掛かった声が、背中の方からかすかに聞こえています。
(そう、ライブの日には、会えるんだ。そしたら、すべてがわかるはず)
 ライブと王様、今度の月曜日は、すごい日になりそうです。

その3 2つのライブ




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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪



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