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2018年05月11日

その1 HART LAND/こころ王国「まりなさんと王様」

まりなさんと王様.png 早いもので、あの不思議な霧雨の夜の出来事から、もう1ヶ月が過ぎようとしています。季節は、一雨ごとに冬めいて、あんなにお洒落に着飾っていた街路樹も、日毎に冷たくなっていく風に、1枚、また1枚とその葉を持ち去られ、ずいぶんとスリムなおすましさんになってしまいました。あの日のことを思い出す度、まりなさんとマスターは、いつもとっても不思議な気分になってしまいます。(本文より)



こころ王国「まりなさんと王様」 

その1 HART LAND


 早いもので、あの不思議な霧雨の夜の出来事から、もう1ヶ月が過ぎようとしています。
 季節は、一雨ごとに冬めいて、あんなにお洒落に着飾っていた街路樹も、日毎に冷たくなっていく風に、1枚、また1枚とその葉を持ち去られ、ずいぶんとスリムなおすましさんになってしまいました。
 あの日のことを思い出す度、まりなさんとマスターは、いつもとっても不思議な気分になってしまいます。
 まりなさんは、乗り気ではなかったのですが、マスターがあんまりしつこく言うものですから、王様がくれたあの「ココロニア金貨」を、近所のジュエリーショップで見てもらうことにしました。もちろん、本物の金貨かどうかを調べる為です。
 結果は、予想通りと言うか、意外にもと言うか、やはり、あのずしりとした重みは、本物のみが持ち得る重みだった、ということでした。
 それは、私たちの日本国の貨幣価値でいうならば、まりなさんの1ヶ月のお給料よりも、ずっとずっとたくさんの金額になるとのことです。
 金貨の鑑定以降、掌を返すように態度を改めたマスターは、経営不振の打開策にと、虎視眈々と王室御用達のジャズバーを狙っているようですが、マスターがいくらインターネットや世界地図、百科辞典で調べてみたところで、「ココロニア王国」なんて国は、世界の何処にもありません。
 当然、まりなさんのスマホの検索にも、引っかかってはきませんでした。
 ココロニア王国の謎は、深まるばかりです。

 さて、まりなさんの住むこの街には、ダンテBARのほかに、もう1件、ジャズやブルース系の音楽を聞かせるお店があります。
 こちらは、ジャズバーではなく、生演奏を聴きながらお酒も飲めるというライブハウスですが、マスターは、その「HART LAND」のことを商売敵と思っているようで、「学芸会レベル」だとか「素人のど自慢」だとか、決して良くは、言おうとはしませんでした。
 でも、まりなさんは、客席が120以上あって、時折出演するプロミュージシャンのライブの時には、立ち見も売り切れるようなHART LANDで演奏すること、そして、そこで万来の拍手や歓声を受けることが、自分の夢の第一歩だと信じて疑いませんでした。
 ところがある日のことです。思いも掛けなかったような話が、まりなさんのところに突然舞い込んで来ました。
 まりなさんの噂をどこかで聞きつけてきたのでしょう。HART LANDの店長さんから「ギャラは出ないけど、今月24日のライブに30分枠の空きが出来たんで、歌ってみない?」と直接連絡が来たのです。
 24日と言ったら、もうたったの2週間ほど先の月曜です。早速その日の夕方HART LANDに足を運んだまりなさんは、店長からの説明の後、ほんの少し考えた末に出演を承諾したのでした。
 と言うのも、お給料日前の月曜日というのは、いつものダンテBARなら、例の霧雨の晩のように「全くの、さっぱり」の客足の日ばかりです。マスターも「いっそ定休日にしてしまおうか」だなんて冗談めかして言うくらいですから、まりなさんがきちんと申出さえすれば、きっとお休みをくれるに違いありません。
 その日の夜のまりなさんは、満席になったHART LANDの客席を思い浮かべながら、レパートリーの1曲1曲を、確かめるように、しっかりと心を込めて歌ったのでした。

 今月24日の夜のHART LANDでのライブのことを思うだけで、まりなさんは、もう天にも昇るような気分になってしまいそうなものですが、実は、やっぱり気がかりなこともありました。
 お休みの理由、つまりこのライブのことを、どんな風にマスターに切り出したらよいものかと、まりなさんはずっと考えていたのです。
 あちらがどう思っているかは別として、マスターにとってHART LANDは、ダンテBARの商売敵です。
 そのライバルとも言えるお店でライブをやるだなんて、いくら誘われたからと言っても、マスターはどう思うのでしょう。「まりなちゃんの夢の第一歩だから」と、許してくれるでしょうか。いえいえ、きっと「商売敵にお客を呼んで、どういうつもりだ」と、怒り出すに違いありません。
 それだけが心に引っかかっで、まりなさんはHART LANDでのライブのことを、心の底から喜ぶことが出来ずにいたのでした。
 ところがです。なんとも偶然にというか、幸運なことが起こりました。
 ライブ出演の決まった翌日のお店の閉店間際、マスターの方から
「申し訳ないんだけど、24日の月曜の夜はお休みにしてもらえないかな」
 と切り出されたのです。
 ダンテBARには珍しく、貸切りの予約が入ったのです。
 お店の常連さんの1人に、白石さんという人がいます。近くの設計事務所の社長さんなのですが、もちろんジャズ好きで、取引先の社長さん同志が集まって「FREE BIRDS」というトリオを組んでいます。
 初心者の集まりの、それこそ学芸会レベルの素人バンドなのですが、そのFREE BIRDSが、バンド結成1周年を記念して、日ごろの練習の成果を、部下や家族に披露しようということになり、このダンテBARが、その会場になった、という訳です。
 当然その日は、まりなさんの演奏はお休みになるので、昼から夕方のオードブル作りを手伝ってもらった後は、お役御免になるのです。
 本当に久し振りの団体さんの貸切りに、マスターは、カウンターで人数の計算やステージのレイアウトに奮闘しています。
「参ったな、椅子が足りないよぉ、借りてこなくっちゃな。こりゃあ、準備には女房と妹にも手伝って貰うしかないな」
 と言いながらも、ダンテBAR始まって以来の盛況が目に浮かぶようで、マスターはとろけてしまいそうなホクホク顔です。
 しかも、社長さん繋がりで、新たな常連さんが芋づる式に増えるに違いないと、マスターは、まだ取ってもいない狸の皮算用までしている始末です。
 それはそうかもしれません。マスターは、冗談めかしてはいましたが、ことあるごとに、
「これから年末にかけては、ダンテBARの存亡を賭ける時期だから、まりなちゃんも気合を入れて歌ってね」
 と言われていたくらい、お店の経営は芳しくないようなのです。

 まりなさんとFREE BIRDS、この同じ日のほぼ同じ時間に開かれることになった2つのライブという、神様からの思いがけないプレゼントに感謝をして、まりなさんは結局、HART LANDのことは、マスターには言わないことにしました。
 1回空きがあって声を掛けてもらえただけのライブで、そんなにとんとん拍子にHART LANDのレギュラー出演が決まるなんて、とても思えやしませんでしたし、何よりも、久々の捲土重来のチャンスに懸命に頑張っているマスターに、わざわざ水を差すようなことを、まりなさんは言えなかったのです。
 HART LANDでまりなさんの歌を気に言ってくれたお客さんが、ダンテBARにも聴きに来てくれて、お客さんが少しでも増えたとしたら、その時は、マスターにライブの話をしようと、まりなさんは考えていました。

その2 丸蔵くんに続く




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名 前/maruzoh こと 熱田丸蔵
出没地/和光、富士宮、麹町 誕生日/9月7日 乙女座
好きなもの/こども、詩、絵、童話、小説、音楽、お酒、美味しいもの、犬、野球、寺、神社、花、ギター、家族
とても影響を受けた人/灰谷健次郎さん、鹿島和夫さん、ドン・カ・ジョンさん、かしわ哲さん、PANTAさん、ジョン・ライドンさん、小澤征爾さん、帚木蓬生さん
maruzohより一言/運も、人も、夢だって、欲しがり過ぎると逃げてっちゃう。幸せは、み〜んな天下のマワリモノ。みんなで仲良く分け合おう♪



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