![]() | 30回目を迎えた迷作劇場。 思い出深い作品も数ありますが、なぜか「あれ?こんなの書いたっけ?」という作品に不思議なモノが多いんです。大方、お酒を飲みすぎて、勢いだけで書いてしまった物語なんでしょうが、それはそれでまた、面白いですよね。これは、まさにそんな作品です。 |
迷作劇場
vol.30 「罵倒屋さん」
2007年9月4日掲載
九月初旬。昼下がり。物売りの声。
「毎度御馴染み、
バトウの移動販売でございます。
レトロ調から斬新な物まで、
はば広く取り揃えてございます。
お気軽にお声をおかけください。
こちらは、バトウの移動販売でございます」
はて?
バトウの移動販売?
バトウ・・・・
馬頭観音でも売って歩いてるんだろうか?
僕は窓際に移動して、
拡声器をつけた軽トラックを見やる。
ちらほらと近所の主婦らが集まって来ているようだ。
作業着に身を包んだ中年の男は、
見るからに人懐っこい顔をして
愛想笑いを振りまいている。
僕は暫くそうして
カーテンの陰から見ていたのだけれど、
彼が何を売っているのかがさっぱりわからない。
主婦が引き上げるのを待って
僕はサンダル履きで
バトウ屋とやらに声をかけてみた。
「ちょっとお尋ねしますが・・・
聞き違いでしたらすみません。
バトウ・・と聞こえたんですが、
あなた一体、何を売ってらっしゃるんですか?」
よくある質問なのだろう。
男は、少しも驚かずにこう答えた。
「バトウでようございますよ。
罵倒です。怒鳴りつけたりする罵倒です」
罵倒・・・
罵倒屋・・・
罵倒の移動販売?
「罵倒・・を、売ってると・・・」
「はい。さようでございます。
世の中には、お気の弱い方も
いらっしゃいますでしょ?
そんな方などは・・・・」
「わ・・分かった!
そういう人たちの変わりに
怒鳴ってやるわけだね?」
話の途中で口を挟んだ僕にも
罵倒屋は文句の一つも言わず続けた。
「いえいえ、そんなんではございません。
私どもは、もう少し文化的な
物売りでございまして・・・」
「そ・・そうか!今度こそ分かった!
殴られ屋みたいなもんでしょう。
罵倒されてお金を貰う。
ストレスの溜まった現代人にはぴったりだ!
どう?違います?」
「残念ながら、違います」
「じゃあ、一体・・・・・」
「はい。
一旦お怒りになってしまったりすると、
頭に血が上ってしまって、
思っていることがすぐに出てこなかったりとか、
そんなことございませんか?
また、怒鳴りつけて文句を言いたいのだけれど
格好のいい台詞が思い浮かばないとか・・・
あるいは、文句を言いたいけれど、
仲直りがしやすいような台詞はないかとか・・・」
「罵倒する、台詞を売ってるんだ・・・」
「さようでございます。
9月は、夏の在庫がだぶついてますんで、
お買い得になっております」
「た・・例えば?
そう、さっきの主婦は何を買っていったの?」
男は、軽トラックの荷台から
分厚い帳面を引っ張り出すと
ペラペラとページを繰っていった。
「先ほどの奥方は、
ご主人がキャバクラに行かれたのが発覚したので
文句が言いたいとのことでした。
怒りの度合いは中の上クラスで
仲直りが可能な範囲。
できれば、
欲しかったバッグを買わせるように仕向けたい・・
ちょっと、高度な要求でございましたなぁ。
3千円台後半の品でした」
「で・・どんな罵倒を売ったの?」
「いえいえ、それは企業秘密というものです。
ここで、ただでお教えするわけには
いきませんでしょう?」
「なるほど・・・
じゃあ僕がお客になればいいんだな。
とにかく安くていいからなんか売ってくれないかい?」
「お安くですか・・・・
そうですねぇ。
お客様のようなお若い方なら
粋な罵倒がよろしいかと存じますが・・・」
「いいねえ。粋な罵倒。
100円くらいのでいいからさ」
男は、僕の渡した100円玉を大事そうに受け取ると
「まいどありがとうございます」と深々とお辞儀をした。
そして、茶封筒にA4用紙を
綺麗に折りたたんだものを僕に手渡し、
最後にもう一度礼を言ってから軽トラを走らせた。
僕は部屋に封筒を持ち帰って、
誰もいない部屋なのに、なぜかこっそり開いてみた。
ところが、
僕の紙にはただ一言
「てやんでいべらぼうめ」
と書かれていただけだった。
ちょっと拍子抜けしてしまったが、
100円では、まあこんなものなんだろう。
でも僕は、
文句ぐらい自分の言葉で言えるからいいやって
そんな風に思ったら、
罵倒屋に群がるお客がちょっと可哀想になった。







インテリ気取りなクレーマーさんが
冷静に絡んでくる時、
もしかしたら
こちらで購入されてるのかも知れませんね(笑)
実は、今朝オイラさんの「心」のコメしようとしたんだけどできなくって、
よく考えたらURL入りのコメントは受け付けなかったんだよね。
で、この場を借りちゃうんだけど、
僕の書いた童話に、とっても似た感覚のものがあって
この「心の器」↓
http://buster2.seesaa.net/article/103125451.html
を読んで欲しいなと思ったんです♪
そうなんです・その2。
きっと、maruzohさんとこのこころ王国に出会わなければ完成し得なかった作品です。
いつも頭の中にあるテーマだけど、
今回は直球勝負でした(笑)
それから…
実は、まりなさんと王様も読み切ってたんですが、
その感想を形にしようしようと思ってる内に
例のネカフェ暮しが始まってしまい…(笑)
だからこの度の“心”は共感から派生した、
こころ王国の二次創作的な部分もあったわけで…
なので
気付いてもらえてとっても嬉しいのです^^
僕にとって、非常に思い入れのある作品が「まりなさんと王様」です。
これのために始めたブログでしたし、
当初はそれ以外を書くつもりもありませんでした。
でも、あの作品を書くことによって、
僕自身が変わるきっかけとなったし、
今まで考えられなかったような仲間が出来たし、
あの作品には、本当に言葉に出来ないくらい感謝しています。
そして、あの作品に共感してくれた人たちにも、
心の底から感謝しているんです♪
オイラさん、ありがとう!