![]() | 「俺様とマリア」略して「俺マリ」。 プロレスのテイストをちりばめた世界一擬音の多い勧善懲悪な日活系新宿ラブロマンス冒険活劇。俺様を自分に置き換えて読めば、スカッと爽やか。炭酸系のお話です。前回までは、「俺マリ」のカテゴリーでどうぞ! |
俺様とマリア
第30回 スパーリングパートナー
公園を入って芝生の広がる広場に出る。
ここ、ここ。
ここで、花見やったんだよ。
「お・・おっちゃん、特訓場って ここかい?
ここ・・・、新宿中央公園・・だよな」
「ああ。そうだが、それが何か?」
「いや、差別するわけじゃねえけどさ。
ここって、ホームレスのメッカじゃん?
俺様のスパーリングパートナーってのは、
レゲエのおっさんか誰かかい?
もし そうだったとしたら、
悪いけど・・・
風呂に入ってからにしてもらいてえんだけどな・・・」
俺様は取り立てて綺麗好きという訳じゃねえ・・
というか、どちらかと言うと風呂嫌いな方だろう。
しかし、そんな俺様だって、
何ヶ月も風呂に入ってねえ野郎と
組んずほぐれつってのは、ちょっと勘弁だよ・・・
「ふふふ・・・ 心配するな。
確かに野郎たちは何ヶ月どころか
産まれてこの方風呂に入ったことなんか
1度だってねえだろうが、
これがまあ、案外綺麗なもんだよ」
「う・・産まれて初めてだって?
おっちゃん、冗談にもほどがあるぜ」
俺様の言葉に耳を貸さずに
おっちゃんは、悪戯っぽく笑いながら
なおも奥に進んで行く。
おっちゃんは、枝振りのいい桜の木を見つけると
木の幹をポンポンと叩きながらこう言った。
「この枝だったらサンドバッグだって充分吊れるし、
タックルの練習だってできる。
どうだい? いいだろ?」
なぁんだ。
俺様の練習相手ってのは、桜の木かい・・・
そりゃあ桜の木は、風呂にゃ入らねえよな。
でも・・・
「おっちゃん、俺様の練習相手ってのは、
こいつ・・、この桜の木のことかい?
確かに、いい枝ぶりだけどさ
この程度の木だったら
わざわざ中央公園でなくったって
他にいくらでもあるんじゃねえか?」
おっちゃんは、にやりと笑ってから
「NO NO」とばかりに、人差し指を左右に振ってみせた。
「兄ちゃん、木は木でしかねえよ。
あんまり勿体つけるのもなんだし、
じゃあ、そろそろ呼んでやるとすっか・・」
おっちゃんは、さっき左右に振っていた人差し指と
親指で丸を作ったと思ったら、
口にくわえて大きく息を吹き出した。
ぴゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぃぃぃぃぃぃぃぃ
都会のど真ん中
静かな公園の午後、
秋の透明な空に指笛が沁み込んでいく。
ぴゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぃぃぃぃぃぃぃぃ
俺様はふと、
ガキの頃 田舎の空で輪を描いて飛んでいた
トンビのことをのんびりと想い出していた。
その時だった。
シャウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!
俺様の背後を
何者かが猛スピードで駆け抜けていった。
シャウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!
い・・いや、複数だ。
もう1人いるっ!
「くっ!」
振り向いたが、スピードに追いつけない。
タッ!タタッ!タッ!
その黒い影が、俺様の背後、
視界の外で鋭角的にターンをしたようだ。
「く・・くそぅ!」
俺様は、完全にバックを取られたままだった。
な・・なんてすさまじい速さなんだ・・・
とても人間業とは思えない。
「兄ちゃん。 どうだい?
こいつらのスピードは・・・
この動きについてこれなければ、
ウルフガイの動きになんか、到底ついてけやしないぜ」
うなだれて振り返った俺様が見たのは、
おっちゃんにじゃれついている
3匹の野犬たちだった。
「こいつらが、
俺様のスパーリングパートナー・・・」
《つづく》






